NTT都市開発株式会社「アーバンネット名古屋ネクスタビル」

屋内インフラシェアリング 2022年
オフィスビル

  • 所在地愛知県 名古屋市
  • 延床面積30,312.91㎡
  • 構造地上20階 地下1階

次世代型オフィスの基盤としてインフラシェアリングの5G通信を活用

NTTグループの街づくり事業を担うNTTアーバンソリューションズグループの一員として、テクノロジーを活用した次世代型オフィスビルの展開を積極的に進めているNTT都市開発。2017年にUDゆめ咲ビル(大阪府大阪市)に初めてJTOWERの屋内インフラシェアリング・ソリューションを導入いただいたのを皮切りに、5Gを活用する次世代型オフィスにも採用いただいています。インフラシェアリング導入の決め手やメリット、今後の展望等についてうかがいました。

お話をうかがった方

都市建築デザイン部
建築・エンジニアリング部門 担当課長
神谷 友彦 様

一番ありがたいのは、携帯キャリア各社と調整する手間がなくなったこと

― JTOWERの屋内インフラシェアリング・ソリューションの導入を決定いただいた決め手や、その当時、通信環境整備に対して課題に感じていたことがございましたら教えてください。

インフラシェアリングはJTOWERが参入する前にもいくつかの会社が手掛けており、もともと興味を持っていました。その理由の一つは、各携帯キャリアとの調整の煩雑さです。施設を利用するお客様にとって携帯電話はインフラです。そうしたインフラを提供するにあたり、装置を置く携帯キャリアの数だけ、施工の調整が発生し、費用の負担も重い。それで、インフラシェアリング事業がうまくいくと面白いと考えていました。

実は一度、都内の商業施設でインフラシェアリングの提案を受け、導入を進めたことがありました。しかし結局、携帯キャリアの理解が得られず最後までやり遂げられなかった。その時、インフラシェアリングは事業者の交渉力がなければ成り立たないということを知りました。この案件ではそこから急遽、各携帯キャリアの個別対応に切り替え、現場の調整には大変苦労しました。しかも、3キャリアのうち1社は一部で導入が遅れクレームを受けたことが社内でも問題視されました。

そんな折、新たな開発案件でJTOWERから提案があり、他社でも既に運用されている実績もあると聞き、導入の判断に至りました。以前、一部キャリアの導入が遅れてしまったことも、インフラシェアリングを選ぶきっかけの一つになりました。自分たちで複数の携帯キャリアと交渉するより、ワンストップでやってもらう方が、会社ごとのばらつきも改善できるわけです。

― 導入後の通信品質やJTOWERのサポート体制はいかがでしたでしょうか。

JTOWERに依頼し、問題なくサービスが開始されました。その後、これまで導入したどの物件でも通信品質に問題はありません。テナント様からのクレームもなく、安定的に稼働しています。導入後のアンテナの追加といった携帯キャリアとの交渉もJTOWERにお任せしたので、手間がかかることもありませんでした。新たに楽天モバイルが新規参入しましたが、簡単に追加ができることもメリットだと思います。

ここ数年で、携帯キャリアの意識も変わってきており、ある部分は共用してコストを下げていくという流れになりつつあるように感じています。最近では、建物内の設備でも、単独の機能だけを持つものはなくなりつつあり、他社が作ったものも組み合わせて効率化していこうというエコシステムのような動きがトレンドです。インフラシェアリングは、まさにそうした取り組みの先を行ったものだったのではないかと思います。

― その後、新設の物件では継続的にお任せいただいていますが、どのような点でご評価をいただいておりますでしょうか。

一番ありがたいのは、携帯キャリア各社と調整する手間がなくなったことです。JTOWERは4Gだけでなく5Gにも拡張し対応いただいているので、本当に楽になりました。そのため今は、開発案件があればJTOWERに最初に相談をしています。

個別で携帯キャリアと調整するのは本当に大変です。各社で方針もスケジュールも様々ですし、以前は各キャリアに相談窓口となる部署があったのですが、それもなくなりつつあり、JTOWERからしっかり話をつないでもらう方が確実です。
施工もJTOWERとだけ調整すればいいので楽になりました。これまでは、アンテナの調整も、離隔の調整も個別にやらなければならず、それぞれの点検口を付けたりと、非常に大変な作業でした。しかも、各社それぞれ委託する通信建設会社が異なっていて、費用の調整もつかなかった。
今や建物の中でも携帯電話はつながって当たり前です。そうした中でも、インフラシェアリングは確実な手法だと考えています。

デジタルを活用し、様々な土地、場所、お客様のニーズに応じた新たなサービスを生み出す

― 昨年、導入いただいたアーバンネット名古屋ネクスタビルは、NTTアーバンソリューションズグループにおける次世代型先進オフィスの第1 号案件として注目されています。グループで推進されている「街づくりDTC®」とはどのような取り組みなのでしょうか。また、アーバンネット名古屋ネクスタビルでは具体的にどのような施策を行っているのでしょうか。

NTTグループの街づくり推進事業の体制強化に向け、2019年7月に、NTTアーバンソリューションズが発足しました。傘下のNTT都市開発、NTTファシリティーズ、そのほかNTTグループ各社や幅広いビジネスパートナーとともに、NTTグループならではの新たな「街づくり」の推進しています。
この新たな体制が発足し、最初の開発案件となったのがアーバンネット名古屋ネクスタビルで、次世代型先進オフィスを実現する重要なプロジェクトとして位置づけられました。

ビルには様々な情報があり、各種センサー等により情報が逐次蓄積されていきます。NTTグループとしては、デジタルとリアルの融合を進めていく中で、街づくりにも、その技術を活用し新たな価値を生み出していく取り組みを進めています。これが「街づくりDTC®」です。
「DTC(Digital Twin Computing)」とは、現実世界からリアルタイムにデータを取得して仮想空間に再現したデジタルツイン(DT)同士をかけ合わせてシミュレーションし、それを現実世界にフィードバックすることで、分野を横断した価値の実現をめざすものです。

アーバンネット名古屋ネクスタビルでは、この「街づくりDTC®」の基盤を活用し、警備ロボットの巡回経路を調整したり、人流データにより快適かつ省エネを実現する空調の制御などを行っています。この「街づくりDTC®」の基盤は、インフラシェアリングで構築した5Gネットワークが活用されているのです。

― 次世代型オフィスの取り組みを含め、今後の展開について教えてください。

都内の大規模な案件に加え、御堂筋、仙台など2024年に竣工を迎えるビルで全国的に次世代型オフィスの取り組みを展開していきます。各地で同じことを行うのではなく、様々な土地、場所、お客様のニーズに応じた課題や求められる新たなサービスを生み出し、様々な発展形を創っていくことが街づくりDTC®の基本方針です。
ただデジタルはあくまでも道具であり、うまく活用してどういった価値を生み続けられるか、それをいかに柔軟に提供できるかが重要です。働き方が変わっていく中、オフィスに価値を感じてもらい、その周辺地域も含め活性化していくことが私たちの目指す次世代オフィスです。もちろんデジタルだけでなく、屋上や憩いのスペースなど、顧客の体験を重視した、今までにない付加価値を今後も目指していきます。

― 今後、JTOWERにご期待いただくこと、ご要望などございましたらお願いいたします。

私たちはNTTグループということもあって、通信のイメージは強いのではないかと思います。通信は重要なインフラの一つですから、もちろん、漏れのないよう提供しなくてはなりません。そうした中で、インフラシェアリングを導入していることは、私たちのサービスとして一つの強みになるものだと考えています。

通信技術の発展に伴い、5GなどJTOWERの装置やサービスも拡張し、進化していくかと思います。設備の軽量化、コンパクト化によってより省スペースを実現するということもあるかもしれません。進化はどこかで終わりではなく、今後もビルと一緒に、成長していって欲しいですね。